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東京国立博物館に憩う

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東京国立博物館に憩う

国内最初の国立博物館は、歴史とともに静かにありました。
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東京国立博物館保存修復課長の神庭信幸さん




同館のウェブページにおいて、保存修復の研究が紹介されています。

博物館の包括的保存システムの構築に
おける研究

東京国立博物館保存修復課長の神庭信幸さんに案内頂きました。

本館地下/修理室

神庭: 当館の地下には様々な部署がありますが、保存修復課も本館の地下にあり、修理室も本館地下に集中しています。これからご案内する修理室は、日本やアジアの絵画や書跡などの美術品を修理する部屋です。伝統的な(そうこう)技術を用いて作品を修理しています。手前におりますのが、鈴木さんでこの道20年程のキャリアです。その後ろが沖本さんでこの世界で8年程のキャリアです。今2人が取り組んでいるのは、当館所蔵の書跡と絵画(両界曼荼羅)の修理です。

鈴木: こちらは、手鑑に貼られていた仮名消息断簡です。表に書かれているのは、消息で、裏に透けて見えるのは法華経の文字です。こういったものが手鑑に貼られておりまして、今回手鑑から剥がして掛け軸の状態で展示するという事で、修理しています。ちょうど今取り掛かったところで、今は状態や構造を確認しています。三層の裏打ちかと思ったのですが、そうではなさそうなので紙の様子を裏から探っています。こちらから見ると経の文字が正体にみえるかと思います。お経の紙背に手紙を書いたものです。料紙の配置が若干かわった状態で一枚にまとめられているので、もう一度確認しながら修復して行かなくてはなりません。虫損からみると、位置が異なっていることがわかります。これはもともと折り状のものなので、虫食いの場所がシンメトリーでないことから分かります。

神庭: 今説明ありましたように、虫損が著しいということ、本来の場所が動いている可能性があること、経典の裏に書かれたものであるということを念頭におきながら、今後どのような処置をしていくかを考えながら、このように内部構造を見て、過去の修理方法や構造、接着状況など料紙を事前調査している段階です。(右上段に続く)



おおよそ本作品の修理にかかる時間は、日数にして100日程を考えています。全体の工期としては一年を掛けて行います。こちらは両界曼荼羅の胎蔵界の修理を始めたところです。丁度、絵の周りに張られていた装飾用の裂(きれ)を外して、絵の部分だけにしようとしていることろです。

沖本: これが修理前の写真ですが、もともと額装されていた本紙を今回掛け軸装に仕立て直すという修理方針が立てられました。X線撮影などの調査に続いて、剥落止めを終えたところです。今は、ぐるりの縁布(ふちぬの)という裂(きれ)を取り外している過程です。この後にクリーニングを行い、表打ちを施し、裏打ち紙をする作業に入っていきます。工期は一年を予定しています。

神庭: 修理前は額の状態でしたが、今回の修理では軸装に変更することになります。もう一幅の金剛界曼荼羅は、昨年修理を終えました。修理を行って見ますと、これまでの額装というのは比較的新しいものということが分かりました。また、本絹(本紙)そのものに横折れが沢山発生しています。横折れは、巻物の状態で長いこと保管されることでできるものです。
 ということは、この両界曼荼羅は永らく掛け幅の状態にあり、明治前後かと思いますが、割に近年にこのような額装に仕立て直されたのではないかと思います。額装は作品を巻いたり開いたりするストレスをかけないので、作品にとって安全に思えますが、一方では常に空気に晒されて、そして光も当たりやすく比較的傷みやすいのです。日本で培われてきた掛け軸装は、そのような意味では光や空気をかなり遮断するので保存性が高くなると考えて、掛け軸に戻すことになりました。(左下段に続く)

保存修復課の鈴木晴彦さん

光に透かして状態を調査しているところ

作業中の沖本明子さん

仮名消息断簡

両界曼荼羅を解体しているところ

Q: 今回は、退色の修復などの他の処理も行われるのですか。

神庭: この作品は、これから少しづつ様相を変えていくと思います。これから軽く霧状の水分を全体に与えながら、表面に付着している汚れを少しずつ下の吸い取り紙に吸わせる作業を行います。そうすることによってゆっくりと表面の汚れが落ち、現在の色よりももう少し色が鮮やかに見えてくると思います。特に新たに絵具をさすということではなくて、クリーニング作業を行うことで相当色が戻ってくるのではないかと思っています。

Q: 照明は特殊なものですか。こちらの白色灯で手元を投影されているのですか。

神庭: 作業によって違います。鈴木さんが行っているような構造を見る作業には、下から光をあてて、かつ横から斜光線を当てて紙表面の毛羽立ちや水を加えたときの表情が見えるようにしています。光の方向を変えることで、細かな紙の様子を見ながら作業を行います。真上から真っ直ぐに当たる光では、表情が見えにくいのです。凹凸が見やすい指向性の高いライトです。蛍光灯では光が拡散してしまいます。(右段に続く)

神庭: 現在行っている作業は本格修理ですが、ここでは本格修理だけではなくて、応急的な修理を行います。応急修理と言うと、その後に本格が待っているように聞こえますので、対症療法の対症修理と呼んでいます。症状が現れたらそれに合わせて行う修理を本格修理以外にも多く行っております。今日は二人とも本格修理に取り組んでいますが、毎日ずっとという訳ではなくて、様々な掛け軸、画帖、折り本、絵画、書籍、浮世絵などの様々なジャンルや形態を、またわずかな傷みがあるものをその場で迅速に手当てしています。状態に合わせて速やかに処置を行っていくということが重要でして、いずれ行うからしばらく放っておくと段々傷みが進んで行きますので、可能な限り速やかに手当てして、本格修理は避けられるような状況を作り出すというのが対症修理を行う目的です。

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